「かりんネット歌会2025 vol.3」
1 朝凪の英虞湾を船が一条の線を描きつつ出でてゆきたり 加古三津代
2 一線を越えしを知りぬ死ねといふ罵倒の後のむなうち捩(よじ)れ 遠音
3 AIが隆盛の世に連結が外れ始める新幹線は 日高雅彦
4 「からだの線を拾ひません」などひろふ夜の寒きこころよ萌黄色なれ 若槻真美子
5 草笛の音色が空へ溶け込んで水平線の向こうの島へ 阿部の天気
6 此の岸を離るる流氷音もなく君とわれとの氷平線思(も)ふ 嶌菜穗子
7 境とふ見えざる線さへ無かりせば多(さは) なるさちも奪はれざりしを 竹内幹夫
8 磁気嵐に悩まされいる無線室ソマリア沖に父の死を知る 檜垣実生
9 背を向けてベッドに沈めば透明な境界線がひんやりと立つ 槙奈々帆
10 線引きとならぬ真冬日に立春だから日本ていいなと思う 田浦 将
11 男性は長髪女性は短髪のカップル三組見る井の頭線 吉村享子
12 直線を引きて始むる吾が裡の像を図案に起こすその度 まれよ
13 夫入院ひとりで行った墓参り線香の煙小さく揺れる 早川成美
14 勁い線書を活かすには線そのもの筆の流れに身を任せつつ 山下騰子
15 手のひらの生命線をポケットに握って歩く三月の夜 あづま洋子
16 電線が映らぬように撮ってゆく昔話のような景色を 林 祐一
17 点でゐることは容易であるけれど未だ線にはなれぬ実存 吉岡健児
18 隣り合ひ食事の母娘(おやこ)は右利きと左利きおもしろきかな線対称は 福島隆史
19 なだらかな背(せな)の曲線みせながら春てう奴をさがす雉猫 蚫谷定幸
20 波線にニコちゃんマークを添へたれば本心さらさぬメールとなりぬ 岩谷富紀子
21 二十首をボツに回してねっくすとばったーのうた前線へ送る 中村暢夫
22 バレンタインは声だけ贈る地上へとゆっくり架かる薄明光線 橘 まゆ
23 僕たちに越える一線などなくていまだにぼくを君付けで呼ぶ 梅原秀敏
24 まだ冷たい風の港にあなたへの花束で引く春の補助線 辻 聡之
25 待ち時間あれば分厚き文庫本ポケットに入れ乗る山手線 夏目たかし
26 やあやあと挨拶をする仲でなし言い訳をして目線合わさず 市川裕子
27 山火事に三陸鉄道止まりおり津波に流れし線路つないで コ力聖也
28 雪溶けて青芝光る中山の直線ぐっと駆け抜ける馬 市川多紀
29 許されぬ花街の恋 一線を越えて冥土へ渡る二人は 増子拓己
30 われ危機にたれもが無視でG線上のアリアを聴きてぬばたまの夜 宮崎 浩
31 線やがて面となりて空間に花の匂いが季節を起こす 中山洋祐
歌会ご参加(出詠・コメント・観覧)の皆様、ありがとうございました。
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2025年4月のネット歌会につきましては、明日、ご案内いたします。
(現在の記事はあと一月ほど公開いたします)
2025年03月31日
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