「かりんネット歌会2022 vol.4」
今井正博 マスクするメガネが曇り前見えぬ「曇り止めする」と張り紙をした
中山洋祐 美しい人の裏切る眼差しを羨しく見ている関ケ原にて
五十嵐満 見えぬとは見ようとせずに済ますことしかと見るべし人の仕業を
吉村享子 寝たきりの母を見舞いに来てくれし人またひとり先に旅立つ
梅原秀敏 見えにくく聞こえにくくも老いの身に河口のように時は流れぬ
橘 まゆ 大楠の枝葉の間に見える空 戦さの記憶消したよと父
蚫谷定幸 見ぬうちに値上げ値上げの続きをり給与据ゑ置き頭あがらず
田浦 将 見るだけに使っていたが僕の目は何か語るや妻が笑みをり
池田竜男 それぞれの眼玉が別の馬を見るものとして馬駆け抜けてゆく
コ力聖也 白バイが見張っていること思いだすスピード出やすきこの道の先
東山研司 蜘蛛の巣に力尽きつつ空を見る蝿の脳にも神は点るか
東 洋子 戦争を見ているカメラで戦争を観ている春のけぶりのにおい
辻 聡之 春の辺に物見櫓は立てられて手庇に降る灰の白さよ
鹿取未放 組合の歓迎コンパに沖縄を熱く語れり未来は明るく見えた
嶌菜穂子 しぶき浴び母が帷へ手をのばす裏見の滝は彼岸と此岸
柴崎宏子 お見舞いに来てくれた貴女が先に逝き私はカオスの今を生きている
山下騰子 ゲルニカの涙落つるやウクライナ見渡す限り黒こげの街
山口コ誠 見果てぬ夢思い月夜の道を行く赫夜姫(かぐや)は母国へ帰ったろうか
遠音 雲見んと仰げばふるりと佇みて息あはあはと昼の三日月
中村暢夫 たましいが抜けてしまって今ここに見えているのは〈コピーロボット〉
横田博行 底知れぬ絶望のような闇に在れど犬は見るとう確かな光
若槻真美子 この星の連帯責任負ふものへあはれむやうに降る夢見草(ゆめみぐさ)
古河 惺 仰ぎ見る半月のさめざめとして老いた頬白鮫の遊泳
刀根卓代 「体育」は見学ばかり やうやくに参加したればビリに居残り
夏目たかし 友人も我もまた皆見合ひ婚あくがれつつも時代は遠き
服部明日檜 桜木を折って散らした君を見て心も花も風に飛ばされ
古川 郁 春の夜のミシン黒糸で黒地縫う 銀針刺し進む見えぬ葬列
歌会ご参加(出詠・コメント・観覧)の皆様、ありがとうございました。
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2022年4月のネット歌会につきましては、明日、ご案内いたします。
(現在の記事はあと一月ほど公開いたします)
2022年04月30日
作者一覧を発表いたします
posted by かりんネット歌会 at 18:19| Comment(0)
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