13〜15番の歌にコメントお願いします。
13 高枝切り鋏を抱えて朗らかに墓掃除に来る義理のいもうと
14 多義的なわたしに紺のストールをかけてそれより雪の気配す
15 騙されし人には義援金はなくさらに傷つく言葉のみ来る
2025年12月18日
13〜15番
posted by かりんネット歌会 at 22:10| Comment(9)
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“紺“という色に象徴されるフォーマルなものをまとえば、周囲からはみ出さないという安心感がある。でも本当の私は多色織の布地なのだから、簡単に単色にまとめて欲しくないという思いもある。
紺色には制服もイメージされます。多感な高校生たちが雪の冷たさから守られながらも、いろんな面を持つ自分を、素直に表に出せる春を待つ情景も想像します。
「抱え」は効いてゐますが、「朗らかに」や「来る」といふ表現は、未だしの印象を覚えます。
「多義的な」という初句に惹かれました。
人は誰もが「ひとつ」、しかし様々な「姿」を創りだすことが出来る。
空も「ひとつ」ですが、様々な天気を生み出すことができる。
さて、今日はどんな「私」で!
雪の冷たさが「わたし」の心に届いています。
3句から4句にかけて句跨がり、4句は句割れしていて、思惟的な歌のリズムを巧みに作っている。技巧的で内容の深い歌。多義的なわたしだけれど、それをあらわに出すと、世間には受け入れられにくい。それで、制服的な紺色のストールを掛けて目立たないようにする。そこから結句に飛躍するので、意味的に少し読み取りにくいのだが、ストールから雪へのイメージの流れはなめらか。やや謎を残したこんな結句もありなのだろう。
「騙されし人」がどのような人を指すのか明確にはわかりませんが、義援金の対象となる災害などに遭った人ではないのでしょう。例えば詐欺に遭って多額の金を失った人に世間は冷たいのかもしれません。そのことへの憤りの感情が作品の核となっています。
「さらに傷つく言葉のみ」とありますが、それがどんなものなのか、読み手の胸をつく具体的な言葉を挙げてもよいのではないかと思いました。
「それより」が不思議で面白いと思いました。「それから」という意味なのでしょうが、「それゆえ」的な雰囲気もある。ストールをかけたから当然雪が降ってくる、的な。
「多義的なわたし」も肯定しているが「雪の気配」もけっして嫌いではなく、でも几帳面に雪に備えている感じを受けました。
「墓掃除」からはしめやかに静々と、という連想をしてしまいますが、その対極にある義妹のたたずまいが面白く、心地よい歌です。
その墓に血縁や思い入れがないゆえにカラッとしていて、「さぁ綺麗にするよー!」と朗らかなのでしょう。
女性がごつい高枝切り鋏を抱えているギャップもよいです。
14 多義的なわたしに紺のストールをかけてそれより雪の気配す
紺のストールは夜の帳を連想したのですが、制服の色という皆さまのコメントになるほどと思いました。
色んな側面を持つわたしに夜が降りてきて、わたしの色やかたちは見えなくなってしまう。あきらめてしまった時、雪の気配を感じた。わたしも夜の帳も、やがて雪が更に覆いつくしてゆく。そんな風に解釈しました。
15 騙されし人には義援金はなくさらに傷つく言葉のみ来る
「義援金」とあるので、被災者には救済があるのに詐欺被害者には無いどころか追い打ちをかけられている、という同情だと解釈しました。
災害と違って詐欺被害は回避する努力ができたはずだということで、同情よりも冷たい反応が多くなってしまいがちだと思います。そういう意味でも賛同や共感が得られにくいテーマですが、あえて歌っている正直さがよいと思いました。
「さらに」はこの場合、無い方が効果的かと思います。